SSS法を用いて枕の高さを計測した3万252人のビッグデータを見てみると、身長、体重、枕の高さの相関を示す3次元グラフで見ることができるようになっています。

身長と体重が増加するほど、枕の高さも増すのがわかります。相関係数は0.79という非常に高い値を示しています。

しかし、少数派ではあるものの、身長と体重に比較して枕の高さがとても低い人、とても高い人がいます。その原因は、枕の高さに影響を与える他のパラメータが存在するからです。たとえば、円背(猫背)、肩幅、顔の幅、身体の柔軟性、身体の左右差、特殊な疾患などです。

私は、多数派の人に適切な枕調節が必要なことと同じく、少数派の人にも唯一無二ともいえる、その人にぴったりの枕調節を行いたいと考えます。

SSS法で枕の高さを決定すると首の傾きが変わることがレントゲン写真で確認できます。私の至適な枕の高さ50mmでは、側臥位と仰臥位で類椎アライメントが良好です。

仰臥位頚椎傾斜角には、頚の骨格のアライメント、つまり並びを反映すると同時に、そのすぐ後ろにある脊髄という神経の束がどんな走行になるかを決定づける重要な役割があります。

この脊髄や、そこから枝として出る頚神経こそが、首の痛みや肩こり、頭痛、手のしびれの原因となります。

頚椎椎間板ヘルニア。頸部脊柱管狭窄症、姿勢異常(円背)という3つの疾患の頚椎のMRI画像をみてみると、枕がない状態では、前方、後方、または前後両方から、脊髄を挟む状態(ピンサーメカニズム=カニのはさみで挟まれる機構)になります。

しかし、至適枕にすると脊髄の走行状態がよくなり、圧迫は軽快、または消失し楽になるのがわかります。この症例が特別な例ではないことを証明するために、私は頚椎疾患のMRI画像を調べました。

その結果、それぞれの疾患の最も脊髄を圧迫している部位において、くも膜下腔という脊髄のまわりのゆとり空間が、枕調節後は8.71mmから9.40mmに有意に拡大しているのが明らかになりました。

 

2003年、東邦大学整形外科教授の勝呂徹先生が、仰臥位における頚椎の傾きを「仰臥位頚椎傾斜角」と名づけてくださいました。

頸部がリラックスして楽な姿勢であるのはもちろんのこと、頚椎の前にある空気の通り道である気道の通りもよくなる大切な角度です。

仰臥位頚椎傾斜は、大後頭孔という脊髄が頭蓋骨内に入る大切な穴の前縁の中点と第7頚椎後面を結んだ線と、臥位姿勢の基準であるC7水平線とのなす角です。定義は難しいのですが、とても大切な角度です。

頚椎のMRI画像で、至適枕における仰臥位頚椎傾斜角を計測すると、大変興味深い結果が出ました。全体の平均角度は、18.1度です。これを男女別にしても、男性18.1度、女性18.1度とまったく同じになりました。

年代別に10代、20代、30代……80代と見ても、17.1~18.9度と大きな差はなく、変形性頚椎症、頚椎椎間板変性症、頚椎椎間板ヘルニアなどの疾患別でも、17.9度~19.2度と有意な差はありません。

つまり、枕の高さを個人個人に調節すると、男女年齢、疾患等を問わず、仰臥位類椎傾斜角は一定であり、その角度は18.1度だとわかりました。
この仰臥位類椎傾斜角を用いて、私は枕の調節方法を確立しました。側臥位と仰臥位に適合する枕の高さを決定する方法です。その命名は「背骨がぐっすり眠れるように枕を調節する」という意味です。

側臥位では頭部・体幹の中心線が臥床面に平行になるように調節し、仰臥位では仰臥位類椎傾斜角が15度前後になるように調節します。これは頚椎にある頚神経の出口が一番大きく開く角度で、そこ通る神経がゆるめられ、血液の循環がよくなり、楽に眠れます(ただし、疾患や姿勢に異常がある方では15度にならないこともあり、あくまで目安です)。

その後、スムーズな寝返りができるか確認します。

もし、ぎこちない寝返りだったら、側臥位と仰臥位をやり直してから、もう一度寝返りを確認します。これを繰り返しているうちに、必ず最もスムーズな寝返りができる高さに到達します。自分の枕で試してみてください。