姿勢には静的姿勢と動的姿勢の2つがあります。

静的姿勢とは、重力環境下でエネルギー効率よく、バランスを維持した静止状態の姿勢です。つまり、支持基底面上に重心を安定した状態に維持し続けることです。

支持基底面とは、接地面に接触している身体部位のことで、立位では足の裏、仰臥位では後頭部・背中・腿やふくらはぎの後面のことです。

一方の動的姿勢は、重力環境下で体位を変化させていくための姿勢戦略です。つまり、力学的平衡を保ちながら次の姿勢に向かって重心を移動させ、その基底面を変化させます。あえて一旦不安定な状態になり、再び安定を獲得する動作です。

たとえば歩行では、立位の状態から片足を振り出して不安定な状態になり、基底面である反対の足でバランスを取りながら、振り出した足を着地して安定した状態になり、これを繰り返します。

寝返りもまったく同じです。仰臥位から左に寝返りをする場合、右手と右足を上げて体の右側面を持ち上げて一旦不安定な状態になってから、左に寝返りを打ち、体の左側面を基底面にして安定状態になります。

つまり、眠っていても正確に姿勢戦略を遂行しているのです。余談ですが、ベッドから落ちるとか、寝返りで壁に手足をぶつけるなどというのは、この姿勢戦略の失敗です。ベッドが狭いとか、壁が近いとかの言い訳はできません。

10年ほど前、私は至適睡眠姿勢を静的姿勢だけから導こうと悪戦苦闘していました。全身の寝姿勢のレントゲンを撮影したり、MRIで神経の状態をいくら観察しても、「これが絶対的な至適睡眠姿勢だ」というものにたどり着けませんでした。なぜなら、静的睡眠姿勢という狭い範囲の中だけで模索していたせいでしょう。

私がこのことに気づいたのは、睡眠時の動的姿勢、つまり寝返りについての様子をよくよく観察したことがヒントになりました。寝返りがスムーズにできる静的姿勢(仰臥位と側臥位)こそ、至適睡眠姿勢ではないかと考えついたのです。